Research Center for Advanced Science and Technology, The University of Tokyo

Touch & Readの利用の様子の図

読み書きに障害のある子どもの支援

読み書き障害のある子ども向けのiPad用アプリ「タッチ&リード」を開発しました。タッチ&リードは,(1)印刷物に含まれる文字を認識する,(2)指でタップした部分の文章を読み上げる,(3)写真やPDFに書き込める(文字や手書きの線・写真・録音音声)という3つの特徴をもったアプリです。

このアプリケーションに電子化された教科書のデータを載せ,2つの小学校における国語の授業の中でヘッドフォンとともに利用してもらい,その効果を検証しました。この実験の中で,生徒は,「タッチ&リード」と紙の教科書の使用を自ら自由に選択できるようにしました。その結果,1,4,6年生の90名中の23名(1年生24名中の8名,4年生35名中の7名,6年生31名中の8名)が「タッチ&リード」の使用を選びました。特に,読みに困難のある生徒は,全員が「タッチ&リード」の使用を選択し,そこに漢字の読みを事前に確認したいと望む他の生徒達も加わり上記人数となりました。

上記実験期間前後での単元テストの結果(授業中「タッチ&リード」が使用できた一方,テスト中は「タッチ&リード」は使用させなかった)を比較したところ,「タッチ&リード」を授業中に使用した生徒達の成績が,使用しなかった生徒達に比べて有意に向上し,「タッチ&リード」が読み支援に効果があったことが確認されました(「タッチ&リード」を使用したグループの平均点は84.1から95.2点へ,使用しなかったグループの平均点は90.4から95.8点に推移)。なお,この結果を受けて,別のクラスにて,試験中にも単元テストを電子化して読み上げてくれるよう「タッチ&リード」を利用できるようにしたところ,中には,これまで平均15点程度であった重度の読み障害のある生徒の国語の得点が90点を超えたケースも現れました。すぐにでも変化をもたらすことのできる方法として,こうした身近なテクノロジーが教育の中で活用されることを切に願った事例でした。

iPadなどのタブレットPCは,電子書籍端末としても注目を集め,教育分野では電子教科書にまつわる議論が活発です。今回の実験用途であれば,小学校低学年であっても子ども達はiPadの操作をすぐに習得し,自ら判断して紙あるいはデジタルの教科書の使用を選択できました。障害のある子どもにとっては,こうした技術を知り,試し,使える機会が重要となります。スマートフォンやiPadのような一般製品であれば,そうした機会もより簡単に増やせると期待できます。

> 「タッチ&リード」の入手はこちら